弟のことを,母は私に愚痴ることがある。
だが父は絶対に愚痴ることがない。
弟が入院したときも,
裁判で国から理不尽な主張をされたときも
いわれなき誹謗中傷を受けたときも
父は,弟の存在を愚痴ることは決してない。
同居している兄も,父が愚痴ることを聞いたことはない。
先日,父の古い日記帳が,茶の間に置いてあったのだという。
開かれていたページを見ると,弟が重度の発作を繰り返し,命の危険に見舞われたときのことが書いてあった。
その日記には
「○○(弟の名前)が不憫でならない。○○を病院の窓から突き落とし,自分も身を投げようと考えた。でも,遺される△△(母),□□(兄),乃梨のことが,ふと頭をよぎった。死ぬわけにはいかない。」
と書いてあったという。
今の私には,その日の父の心境のほうがよく分かる。
兄の話だと,父も兄に読んでもらいたかったのだろう。
姪の子育てのことで,父が兄に何か言いたかったのかもしれない。