佐賀県であった女性3人殺人事件で,福岡高等裁判所が言い渡した無罪の判決に対して,福岡高等検察庁は上告を断念し,3日の午前0時に被告人の無罪が確定した。
死刑求刑事件で,地裁・高裁ともに無罪になって確定するのは,記録が残っている昭和53年以降初めてだそうである。
これについて,2日に福岡高等検察庁が記者会見し,被害者のご遺族に対して検察官を派遣して事情説明に行くことになったと説明したようだ。
事実上の謝罪ということだろう。
もちろん,ご遺族に対して,犯人を特定し,犯人を処罰することができなかったことを,検察官がお詫びするということは正しい。
ただ,被告人席に座らせられていた男性に対して,一言の謝罪もないというのは,どういうことだろうか。
この裁判で1番に苦しんだのは,紛れもなく被告人だった方である。
犯人でないのに,死刑を求刑されたわけで,これを理不尽と言わずに何と言うのであろう。
まず,最初に謝る相手は,被告人だろう。
検察官としては,ここで謝罪したら,後になって被告人だった方から「違法な逮捕起訴で精神的苦痛を受けた。」主張されて国家賠償請求をされた場合に,国に不利に働くという判断があるのだろう。
しかし,国家賠償義務があるかどうかは,裁判所が事実と証拠に基づいて判断するのであり,検察官が謝ったから賠償しなければならないという関係には立たない。
もし,そんな理由で謝らないというのであれば,あざとい。
無実に者に対して,死刑を求刑してしまった過ちを,検察庁はしっかり謝ってほしかった。